防災の日企画! 地震を検知するお手軽キット
あの関東大震災から87年……
いつもはバカみたいに「萌え萌え」言ってる「ゲーム・ホビー」だが、今日はちょっと違った一面を見せるぜ! 筆者はもともとテクニカルライター。難しいことをみんなに分かりやすく説明するのが本業なのだ! ということで、防災の日の今日は、地震のメカニズムと予知、そして最近発売された地震を検知するキットを紹介しよう! 文字が多いけど頑張って読んでくれ!
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さて、そもそも「防災の日」が定められたきっかけをご存知だろうか? 大正12年(1923年)9月1日(土曜日)、割烹着姿のお母さんが、帰ってくる子供たちのお昼ご飯を作っていた真っ最中の11時58分44秒に関東一円を襲った自然の猛威。「関東大震災」に合わせたのが「防災の日」だ。
地震は多くの家屋を倒壊させたが、それ以上に激しかったのが火災。今ではライフラインのひとつとなっているガスだが、当時はほとんど整備されておらず、煮炊きと言えば「かまど」だった。昼どきなので多くの家庭がかまどに火を入れ、昼ごはんを作っていたために、地震直後から大火災に発展した。キャンプをする人なら分かると思うが、ガスコンロと違って、轟々と燃え盛る火はすぐに消すことができないのだ。
そんなこともあって、今では9月1日に地震だけでなく火災などの災害も併せて防災訓練を行なうようになったのである。
※ご注意:地震やその予知に関しては未解明な部分も多いため、本記事では一般的とされている内容を元に構成してあります。また説明を分かりやすくするために、仕組みを簡略化したり表現を簡素化している場合があります。あらかじめご了承ください。
地震の検知はいまだ未解明分野
もんぺや着物はカラフルな洋服に変わり、交通機関は蒸気機関車から新幹線や飛行機に、メディアは新聞からラジオ、テレビと経てインターネットに変わった。そろばんと計算尺はコンピュータに変わり、GPSや各種の高性能センサーも開発されたが、関東大震災から87年を経ても、地震の予知はいまだ未解明の分野だ。
とはいえ、通信網やコンピュータの発達で、地震発生後、揺れを感じるまで数秒から十秒前程度までの情報公開が可能になっている。
経験からも分かるとおり、たいていの地震は大きな揺れが来る前に小さく小刻みな揺れが来る。ゴゴゴゴという地鳴りを聞いたことがある人も多いだろう。そう「おっ!地震が来るぞ!」というアノ感覚だ。
地震の揺れは、中学・高校で習ったかも知れないが、2つの揺れが波のように広がっていく。ひとつは「P波」と呼ばれ、縦方向に振動するもので、固体や液体、気体を伝わる波だ。これが地震の前に感じる小刻みな揺れ。岩盤中を秒速5~7kmで伝わる揺れの波だ。
地震の波は、初期微動のP波と本揺れのS波で伝わる
もうひとつは、「S波」と呼ばれるもので、横揺れを伝える波。地震そのものだ。P波に比べると速度が遅く、秒速3~4kmで伝わる。またP波と違って個体(岩盤)のみしか伝わらない。
地震を数十秒前に予知するしくみは、このP波とS波の速度差を利用して、地震がくることをあらかじめ知らせるようになっている。
震源から50km離れた場所では、P波(初期微動)は7.2秒後(50km÷7km/秒)に到着。一方本揺れのS波は、16.7秒後(50km÷3km/秒)に到着する。つまりP波を検知した時点で地震を警告すると、本揺れが来るまでに最大で9.5秒の猶予ができるというわけ。
震源から50km離れた地点では、P波が届いてから遅れること9.5秒で本揺れが始まる
この間に火を止め、机の下にもぐるなどの準備をすれば、被害が最小限に抑えられるという考えだ。とはいえ、一言で「P波を検知する」と書いたが、工事現場やトラックの走行などによる揺れと、P波を見分けるには、技術的にかなり難しいことをやっている。
高速で走行する新幹線には、古くからこのような地震検知システムが装備され、P波を検知した時点で送電を遮断する地震対策が施されている。
が、震源からの距離が遠ければ遠いほど、P波とS波の到達時間の差が大きくなるが、震源に近い場合は時間差がほとんどない。震源から10km地点であれば、P波は1.4秒後、S波は3.3秒後となり、猶予はわずか1.9秒だ。震源地となれば、P波とS波の到達時間に差がないため、ドカン!といきなり本揺れが襲ってくることになる。
先の中越地震で新幹線が脱線してしまったのは、これが原因だ。直下型地震だったため、地震検知システムがP波を検知し電力を遮断しても時すでに遅し。送電を遮断しても時速200kmで走る新幹線は、急停止することができず(数秒で急停止したら地震より危ない)、本揺れの中を走行し脱線してしまったというわけだ。
6200万年後、ハワイは小笠原諸島になり
品川ナンバーが走る!?
現在、数秒前までしか検知できない地震検知の技術しかないが、東海地震はもういつ来てもおかしくないという予測がされている。なぜだろうか?
これはプレートと呼ばれる地球の表面の岩盤が、一定の速度で移動しているため、大まかな予測が可能となっているのだ。とはいえ、物理計算ではなく、サンプルの少ない統計計算なので、かなりあいまい。その予測方法は、地震が発生する次の原理に基づいて行なわれている。
地球の中身はドロドロのマントルになっていて、私たちが住んでいる大地や海底はごく薄い岩盤の上にある。ちょうど中が腐った「みかん」のようなもので、人が住んでいるのは「みかんの皮」の上。マントルは地球内部で熱せられている(熱するというより核融合に違い状態)ので、地球の中心の灼熱のマントルは地表に向かって上り、地表近くで冷やされたマントルは中心に向かって沈んでいく。熱い味噌汁の表面を見ていると分かるが、味噌の微粒子が浮いたり沈んだりしているのを見たことがあるだろう。味噌汁同様、地球内部でも対流と呼ばれる現象が起こっている。
地球内部ではマントルが対流しており、これに浮いた状態のプレートが乗っている
みかんの皮は全部で1枚だが、地球の表面は7つの大きなプレートと、いくつかの小さなプレートで覆われている。このプレートは、ちょうど対流するマントルに浮いているような状態になっているため、プレートはマントルの対流に乗って年々移動しているのだ。
日本の東側沖合にある太平洋プレートは、ちょうど太平洋と同じ形になっていて、関東から東北、北海道の東側の海底で地球の中心部に向かって潜り込んでいる。それこそが、日本海溝でもっとも深いところで8020mという世界だ。8kmの高さといえば、だいたい国際線の飛行機が巡航する高度だ。どれだけ深いかが分かるだろう。
ユーラシアプレートと太平洋プレートの狭間にある日本列島。太平洋プレートは年間10cmも移動している
プレートの仕組みを理解する
太平洋プレートのほぼ中央にはハワイがあるが、プレートに乗って年間約10cmずつ日本に近づいてきている。つまり、6200万年後ぐらいには、ハワイは小笠原諸島となり品川ナンバーの車がブイブイ走っていると予測できる。
一方、日本本土はユーラシア大陸を乗せたユーラシアプレートの崖っぷちにある。そして太平洋プレートは、ユーラシアプレートの下に潜り込んでいるため、プレート同士の摩擦でせめぎ合いが起きている。年に10cmも岩盤が潜り込むような巨大なパワーで……。
ユーラシアプレート(ビルがある方)の下に潜り込む太平洋プレート。中央はかなり歪みが蓄積された状態。何かの拍子でユーラシアプレートが一気にズレると大地震が発生し写真右のようになる
写真はこんにゃくだが、プレートに非常に近い。ユーラシアプレートの崖っぷちは、年10cmずつ太平洋プレートに押されているため、固い岩盤ではあるが徐々に歪みへし曲げられている。その歪みが蓄積すると、ユーラシアプレートがズルッ!っと太平洋プレートの上を滑り、大地震が発生するというわけだ。比較的ゆがみが少ない状態で滑ると、それは小規模の地震になる。
さて話を簡単にするため、ここまではユーラシアプレートと太平洋プレートのみに絞っていたが、日本は4つのプレートのせめぎ合いが起きている、世界でも例がない場所なのだ。そのおかげで地震も多く、狭い国土なのに火山帯も多く存在する。とはいえ、温泉があちこちにあるのは怪我の功名と言ったところか?
太平洋プレートは、北米プレートの下とフィリピン海プレートの下に潜り込む。フィリピン海プレートは、ユーラシアプレートの下に潜り込む。日本は世界に類を見ないプレートの交差点
先ほど、日本はユーラシアプレートの崖っぷちに載っていると書いたが、載っているのは静岡県の安部川から長野県の諏訪湖を通り、新潟県の糸魚川で日本を分断した西側、つまり中京、阪神、中国、四国、九州のみ。
関東、東北、北海道は北米プレートの上に載っている。この北米プレートとユーラシアプレートの境目が、フォッサマグナと呼ばれる日本を分断する大きな溝だ。ちなみに100Vのコンセント50/60Hzの境目でもある。
さらに太平洋側のプレートも1枚じゃない。南からは九州、四国、阪神、中京、そして静岡県沿岸までをフィリピン海プレートがグイグイ押している。さらにフィリピン海プレートは、フォッサマグナの延長線にある海底で北米プレートにぶつかり、小笠原諸島あたりで太平洋プレートにもぶつかっている。
まぁ言ってみれば、豪雨の降る地方で、かつ、家の裏は崩れそうな山。家の前にはダムにつながっている河川が流れ、山の中腹の崖スレスレに建てた家に住んでいるようなモンなのだ。早い話が、かなりヤバイ場所(笑)。
いつきてもおかしくないと言われる
東海地震予知の根拠
今度は歴史の時間だ。プレートが一定の速度で移動しているということは、定期的に地震があるハズ! ということで、偉い人が過去の文献をあたってみると、日本にはこんな地震があったとされている。
フィリピン海プレートに起因する大地震
発生年 規模 発生までの期間
1489年 M8.4
107年
1605年 M7.9
102年
1707年 M8.4
147年
1854年 M8.4
91年
1944年 M7.9
この表は、フィリピン海プレートが原因と見られる地震の歴史だ。だいたい100年から150年周期で地震が発生しているのがわかる。1944年の地震が最後になっているので、次にくるのは2044年~2095年ごろ。アレ? かなり先の話じゃない?
しかし、1944年の地震では、阪神地方は揺れたのだが東海地方は揺れていないというのだ。プレートの境界には幅があるので、フィリピン海プレートの阪神より南側は歪みが戻っていると予測されるが、それより北の東海地方の歪みは1854年の地震以降蓄積されているハズと見られている。1854年から数えると今年は156年目。少ないサンプルだが、過去の例を見れば147年間のインターバルが最長だったので、156年目となった今、東海地方のフィリピン海プレートとユーラシアプレートがいつ大地震を引き起こしてもおかしくないのだ。これが東海地震の予測の根拠。
一方太平洋プレートが引き起こしたと思われる地震の歴史は次の通りだ。
太平洋プレートに起因する大地震
発生年 規模 発生までの期間
1633年 M7.0
70年
1703年 M8.2
79年
1782年 M7.0
71年
1853年 M6.7
70年
1923年 M7.9
最後の1923年は、冒頭にも説明した関東大震災だ。こちらは70~80年周期となっているので、次に来る地震は1993年~2003年。とはいえ、太平洋プレートに起因する大地震というのは、2009年までに発生していないので、こちらもいつ大地震が起きてもおかしくないという、戦々恐々とした事態になっている。
また、2つの表を見比べてみると、フィリピン海プレートの1707年と太平洋プレートの1703年、1854年と1853年というように、互いのプレートが連鎖しあっていると思える節もある。どちらかのプレートによる地震が発生すると、もう片方のプレートも刺激を受けて立て続けに大地震が起きる可能性を秘めているのだ。しかも、フィリピン海プレートも太平洋プレートも、いつ地震が発生してもおかしくないという時期。それゆえ、大地震への備えが今必要なのだ。
フィリピン海プレートと太平洋プレートは互いに影響しあっているため、片方で大地震が発生すると、もう一方でも連動して大地震が発生する可能性が高い
東海地震と恐れられているが、東海地域の人々だけではなく、プレート境界となっている、九州、四国、阪神、中京、東海、そして関東の人々も、地震に対する備え、防災意識を高める必要があるのが分かるだろう。
地震の原因はプレートだけじゃない!
日本は地震まみれ!
これまでプレートに起因する地震を見てきたが、ニュースではたびたび「内陸部の直下型地震」や「活断層によるもの」という言葉も耳にする。先の中越地震や阪神大震災もこのタイプだ。
これらはプレートから離れた場所で発生する地震だが、大元をたどっていくとやっぱりプレートが原因。4枚のプレートがせめぎあう日本では、それぞれが互いに押し合いへし合いするため、広範囲にわたって複雑に歪みが蓄積される。歪みはプレート先端だけでなく、岩盤が岩盤を押し合いプレートから数百km離れた部分にも伝達されるのだ。そこに弱い岩盤があったとすると……。
その通り! 折れたり、ズレたり、滑ったりする。これが断層であり、内陸部で発生する直下型地震だ。断層は、盛んに活動(歪みがたまったりズレている)する活断層と、すでに活動していない断層があるが、突如として活動を再開する断層もあるため予測が難しい。日本列島をCTスキャンやMRIで調べられれば、歪みの蓄積している箇所も特定できるが、なにせ地下何十kmに渡る世界なのでそれは無理。この手の地震は予測できず、地震が起きてから「あ~、やっぱアノ断層は弱くて歪んでたんだぁ」となる。
また、プレートが地中に潜り、マントルに熱せられて破断するなどの地震もある。このタイプの地震は、地中深くで発生するため被害は少ない。とはいえ、1993年に釧路沖で発生した地震では、震源の深さが101kmと深かったにもかかわらず、震度6を記録する場合などもあり、予測不能な上に侮れない地震だ。
それ以外にも火山の噴火による地震もある。とはいえコレも大本はプレートの移動。プレートに押された岩盤に亀裂ができ、地下からマグマが吹き出すからだ。記憶に新しいのは、三宅島の噴火による火山性の地震だろう。活火山も多い日本では、こちらも注意が必要だ。
地震をいち早く検知するキットを見つけた!
さまざまな科学的アプローチで地震予知をしようとしているが、プレートに起因する地震が何十年の幅を持って予知できるのがやっとという技術の限界。
かたや大地震が起きるとワイドショーなどで盛んに放送する、予知した人たちの声。「空の色がおかしかった」「犬がやたらにほえた」「ミミズが土からはい出て塊になっていた」「地震雲を見た」などなど、諸説いろいろある。もう少しソレらしい(笑)例としては「テレビの画像が乱れた」「FMが受信できなくなった」なども報告されている。もっとも有名なのは「地震の前にナマズが暴れだす」だろう。ただこれらを「迷信」と片付けてしまってはいけない。
考古学と同じで「ナスカの地上絵はUFOの飛行場だ!」という説もあれば、「祭りを示すカレンダーだ!」という説も、「水脈を示した雨乞いの儀式」というのもある。いずれも学者が発表すれば、それは「学説」のひとつとなり、どんなにトンデモ学説でも研究対象になる。しかし、学説のひとつひとつを吟味し、証拠などが発見されると、学説のひとつが正しかったと分かる(地上絵は、3番目が今有力説と言われている。十年前までは2番目だったのに……)。
地震予知も同様で、科学的なアプローチとして地震発生前に発生するといわれている電波の受信、また電磁波の変化の研究もあれば、電離層がかく乱されるとしてGPSやさまざまな周波数帯の電波の変化を調べる研究もある。また地中の水脈(温泉など)で放射性の物質の変化を調べている先生などいる。もちろん雲や空と地震の関連性を調べている研究者もいる。
普段は穏やかな電場でも、周囲に異変が起こるとソレを検知できる
「迷信」と思われている言い伝えも、科学的なアプローチと一致して、いつしかそれが正しい説だったと言える日が来るだろう。
現在、最も理にかなっていると言われているのが「ナマズ」の言い伝えだ。ナマズは全身に微弱電気を捕らえる器官を持っており、その感度は1/10万(0.00001)ボルトを捕らえられるという。これは普通のテスターじゃ計測できないどころか、人間の感覚の100万倍にあたる、超高性能センサだ。ナマズはこの器官を利用して、暗闇の海の中でも回りで泳いでいる小魚の方位や距離を知り捕獲するのだ。
管制塔などにある全方位レーダーをイメージしてほしい。自分の周りには、目には見えないが確実に「電波」がある。電波はプールの水のように、自分以外になにもなければ穏やかな状態だ。しかし、プールに石を投げ入れると、それは波として伝わり何かあったことが分かる。そして波の中心部を探してみれば、波を作った原因をピンポイントで特定できるというわけ。実際のレーダーは、電波を送って反射波を捕らえているのでしくみは違うという件は、ノークレームでよろしく!
筋肉を動かすと微弱な電流が流れるというのはテレビでもおなじみ。小魚の場合もしかりだ。ナマズは周囲の電場を常に監視しており、泳ぐ小魚の筋肉がその電場を乱すため、位置を特定できる。
この原理を応用したのが、エヌアンドエスより発売されている静電場センサ組立キットだ。価格は8400円。なお、筆者は秋葉原の千石電商(本店)2階で購入した。
静電場センサ組み立てキット。左がわの金属球が静電場を検知するセンサ
静電場センサ組立キットのしくみ
ここまで地震のしくみを理解していれば、静電場センサのしくみは簡単。プレートに起因する地震でも、内陸部の断層に起因するものでも、地震の発生前には必ず岩盤と岩盤の間に巨大な圧力がかかる。しかも岩盤の大半は、圧力をかけると電気を発生する花崗岩と言われている。
つまり、まだ地震が発生していない状態でも岩盤(花崗岩)には、歪みという大きな圧力がかかり電気が発生する。その電気の行く先は、震源地となる大地や建物などに静電気となって蓄えられる。
静電場センサは、平常時は穏やかな静電場を監視し、岩盤の歪みや地震などによる静電場の乱れを感知し、地震発生前に異常を検知するものだ。ナマズのように、方位や距離などまで捕捉することはできないが、地震が発生する可能性をあらかじめ検知するには十分だろう。
P波やS波は地震が発生してからしか検知できないが、静電場の乱れは発生前から検知できるというわけ。とはいえ、大地で静電場異常を起こすには膨大な電気エネルギーが必要なので、計算上はM6以上の大地震で、震源地から半径50km以内を検知できるということだ。
考案したのは大阪大学の池谷元伺名誉教授。氏は地震予知に関する科学的なアプローチの本を何冊か出版している地震のエキスパートである。子供用のウソ発見器のキットとは違い、簡単なキットではあるが、技術的な裏づけがある測定器と言ってもいいだろう。
計測中は、金属製のザルをかぶせて大気中の静電場のノイズを拾わないようにする。これで地下の静電場のみを検知しようというわけだ
写真は組み立て後の完成品。金属製のボールが静電場を監視するセンサとなっている。金属製のザルは、大気中の電場を遮断するためのシールドだ。これによって、大地方向の電場の乱れのみをキャッチする。静電場は、竜巻や雷でも乱れることが確認されているので、大気からのノイズを拾わないようにしっかりシールドしておこう。
ここまでくれば「大地震の前にナマズが暴れる」という現象が理にかなっているという根拠はすでにお分かりだろう。地震の前に岩盤から発生する電気信号は、ナマズの周りのあちこちで電場を乱すので、小魚はどこに居るんだ! と暴れるというわけだ。
静電場センサを作ってみた
キットのパッケージは箱になっていて、これがそのままケースになるというもの。
パッケージがそのままケースになる
半田付けは一切不要なので、小学校の低学年でも作れるだろう。ただ地震のしくみを理解し観測するなら、中学生~高校生以上の知識が必要だ。
組み立ては、基板から出ているリード線を付属のテープで金属球の内側に貼り、半球同士をテープで貼り付けるだけ。
ケースに基板を入れ、穴からセンサ用のリード線を引き出す 金属の半球にリード線をテープで固定する。確実にやらないと動作不良の原因になる
残りの半球をテープで固定すればできあがり
製作時間は10分ほどだ。あとは別売の単3乾電池2本と、キッチンにある金属製のザルを用意する。また、センサの動作を確認するために、静電気モップ(100円ショップのはたきでOK)なども用意して欲しい。
動作確認用に、100円ショップなどで手に入る静電気モップやはたきを用意する
電源スイッチをONにすると、バッテリ残量が緑のLEDで表示される。電池は1ヵ月連続使用が替え時の目安ということ。さらに長時間、安定させてデータを取る場合は、5V(直流)1~2AのACアダプタを別途用意しよう。アキバなら秋月電子などで破格値で買えるはず。
調整が必要なのは、センサの感度を切り替えるスイッチ。1倍、5倍、10倍の切り替えが可能になっているので、とりあえずは感度を1倍にして動作試験をしてみよう。
電源を入れるとバッテリ残量メーターもかねている緑のLEDが点灯する。点滅したり点灯しない場合はバッテリ切れ
感度の切り替えスイッチは、電源の上にある。1倍、5倍、10倍に切り替えが可能
湿度調整に注意!
静電気は湿度が高いと逃げてしまうので、残暑の厳しい9月に実験するときは、必ずエアコンをかけて湿度を下げた部屋で実験すること。
条件が整ったら、静電場センサの金属ザルを取った状態(センサをむき出しの状態)にする。次に静電気モップを狂ったように振りまくる! 振りまくる! 振りまくる! これで静電気をチャージしてやるのだ。
チャージが完了した静電気モップを静かに金属球に数センチまで近づけて(金属球に触れさせてはダメ)、サッ!と動かしてみよう。こうすることで、センサの周りの静電場を乱すことができる。
あらかじめ静電気をためておいたモップを静かに金属球に近づけ、思いっきり引き離す。これで静電場が乱れる
注目すべきは、センサについている赤いLEDだ。静電気モップをサッ! と動かして、赤いLEDが点滅、ピピピ(30秒ほどなり続けたあと止まる)という警告音が鳴れば動作テスト完了だ。
静電場の乱れを検知すると赤いLEDが点滅、同時にアラームが30秒ほど鳴り続ける
赤いLEDの点滅は、リセットスイッチを押すまで続くので、外出している間にセンサが電場の異常を検知しても、帰宅後に確認できる。またLEDの点滅中は、監視モードが解除されるので、新たに実験をする場合は、リセットスイッチを押して欲しい。
感度を上げ過ぎて誤動作してしまった場合、異常を検知したが再び観測する場合などはリセットスイッチを押す
うまく動作しない原因のほとんどは接触不良
先のテストでうまく動作しない原因の多くは、球の内部にテープで固定したリード線の接触不良だ。こんなときは、次のように改造してみるといいだろう。
用意するものは、キリ(またはドリルと3~4mmの刃)、M3(直径3mm)長さ10mmのナットとネジ×5本だけ。
1、白いリード線を、基板から切り離す
ニッパなどでリード線を根元から切断する
2、球を2つに割って、片方の穴をキリなどで3mm程度まで大きくする
片方の半球の穴を3mm以上まで拡張する。金属球はステンレス製なので、穴の拡張にはかなり力が必要だ
3、基板上の白いリード線の繋がっていた隣の穴に固定
基板裏からM3×10mmのネジを通し、半球をナットで締め固定する
基板の裏からネジを通し、穴を拡張した半球に通し、ナットで基板に固定する。これは試作段階の名残だと思うが、ネジで固定するのにちょうどいい穴と、金属と接触する丸い端子がある。
こうしてネジ止めするだけで、リード線で接続したのと同じ状態になる。
4、もう片方の半球をシールで固定
もう一方の半球をまん丸になるように重ね合わせ、シールできれいに固定する。コレでセンサ部の取り付けは完了
5、基板に足をつける
残り4本のネジは、基板の足にする。部品面からネジを通し、裏からナットで締めるだけ
基板の裏は、半田付けされているので、金属に触れるとショートしてしまう。そこで基板の周りにある4つの穴にネジを通し基板裏からナットで固定する。これで足の完成だ。
改造が終わったら、先と同じテストをして欲しい。多くの場合、これで正常に動作するようになるだろう。
「リード線を半田付けすればいいのでは?」という意見もあるだろうが、金属球はステンレス製なので普通の半田では半田付けできないので注意(ステンレス用の半田が必要)。
静電場を監視して
地震との関連性を調べよう!
キットが完成したら、いよいよ測定だ。マニュアルによれば、網目の細かいステンレス製のザルがいいとしているが、パスタの湯きりザルのように、ステンレスに丸い穴をいくつか開けたパンチングボードを使ったザルが最適かと思われる。これなら、大気中の電場をかなり遮蔽できるし、中に入っている測定器のLEDも見える。
パスタの湯きり用のザルを使うと、かなりシールド性が向上する。穴からLEDの状態も確認可能
センサの設置場所は、下に金属がない場所を選ぶこと。スチール製のデスクなどは、大地からの電場を机が遮蔽してしまうからだ。
まず感度を10倍にセットして、スイッチON。すぐに誤動作してしまうようなら、感度を5倍、1倍と下げて誤動作しない最大感度を調整する。先にも述べたとおり、静電気は湿度によって逃げやすくなるため、雨降りシーズンなら10倍、冬の乾燥した時期なら1倍にするなど、季節に合わせて調整するといい。
感度を10倍にセットして実験。スイッチを入れるだけで反応してしまうような誤動作を繰り返すようなら、5倍、1倍と下げていく
あとは数週間放置して、測定を続けてみよう。もし赤いLEDが点滅している場合は、テレビやラジオの受信障害がないか? 雲の様子は? 犬の様子は? ミミズは? と、いにしえの言い伝えと比較してみるといい。それまでの「迷信」に科学的な裏づけを取れるかも知れないのだ!
2週間測定してみたけど
地震がこなくて検知できず……
筆者はコミケ帰りのアキバで、このキットを買ったので測定期間は2週間程度。その間に発生した地震を、気象庁の地震データベースから抜粋すると以下のようになる(※マグニチュード3.0以上でかつ、最大震度が2以上ものを抜粋。8月27日現在。 )。
発生日時 規模(M) 震源の深さ(km) 震源地 最大震度
2009年8月15日19:45:48 4.6 50 根室半島南東沖 3
2009年8月15日20:47:21 3.3 22 駿河湾 2
2009年8月16日14:08:36 3.3 21 駿河湾 2
2009年8月16日14:27:36 3.4 7 岩手県内陸南部 2
2009年8月17日02:21:07 3.8 49 千葉県北東部 2
2009年8月17日02:23:50 3.6 13 福岡県北西沖 3
2009年8月17日09:05:49 6.7 48 石垣島近海 3
2009年8月17日19:10:54 6.6 42 石垣島近海 2
2009年8月17日19:15:05 5.3 43 石垣島近海 2
2009年8月17日20:40:11 3.9 14 福岡県北西沖 3
2009年8月18日06:58:55 4.4 92 栃木県北部 3
2009年8月18日19:22:48 3.1 19 駿河湾 2
2009年8月18日22:17:35 5.9 44 石垣島近海 2
2009年8月20日13:49:43 3.4 54 沖縄本島近海 2
2009年8月20日23:09:13 3.4 19 駿河湾 2
2009年8月21日08:51:16 4.2 64 千葉県北西部 3
2009年8月24日04:46:26 3.4 33 日高支庁中部 2
2009年8月24日13:30:39 3.6 19 新潟県上中越沖 3
2009年8月24日14:26:16 5.4 172 青森県西方沖 3
2009年8月25日02:22:49 4.5 32 浦河沖 3
2009年8月25日20:19:26 3.6 26 千葉県北東部 3
マグニチュード6以上の地震は、8月17日に石垣島近海で発生したものの、神奈川に住んでいる筆者は検知不能。8月25日には、近くの千葉県で発生したが、マグニチュードが3.6のため検知不能だった。
実験とは無関係だが、8月24日の青森県西方沖は震源の深さが172kmと非常に深い。これは先にも説明したとおり、太平洋プレートが地中深くで折れ曲がったことによる地震だろう。内陸部で発生している地震は、おそらく活断層によるもの。こうして地震に関する知識があると、地震速報をより深く分析できるから面白い。
パソコンに接続してデータを取ることも可能
パソコンを使って本格的にデータを取りたいという人には、外部データ出力端子がついている。観測用のフリーソフトとAD変換ケーブル(別売)を用意すれば、長期間のデータ収集が可能だ。
また手元にPCに接続できるテスターがある場合は、簡単にデータを取り込める。
秋葉原の秋月電子で購入できるMETEX社製のテスターM-6000M。このモデルはRS-232C(シリアル)でパソコンと接続でき、添付のソフトでデータを記録できる。また高性能なフリーウェアのデータロガーもある。USB接続できるモデルもあり。価格は5250円
基板上の左下にあるCN2の端子がデータ出力端子だ。ここの「GND」にテスターのマイナスプローブ(棒)、「SIG」にプラスプローブを接続。テスターを電圧測定モードに切り替えると、静電場の乱れを電圧として読み取れる。
キットでは、一定値を超えると警告するようになっているが、この端子には警告するまでもない微弱な電場の乱れも、リアルタイムで出力されるようになっているようだ。
基板左下にあるCN2コネクタ。ここに抵抗の足などを半田付けして、テスターを当てられるようにしておく。GNDにはテスターのマイナス、SIGにテスターのプラスを接続し、電圧測定モードにすると値が読み取れる
このようにテスターを接続した状態で、静電気モップを動かしてみると電場の乱れを読み取れるので、ぜひ試してみて欲しい。パソコンにデータを転送しないのなら、普通のテスターでもその様子を観察できる。
静電気をためたモップを静電場センサにそっと近づけ、力一杯一気に遠ざけると、3.2Vの信号が出てきた。どうやら3.5Vあたりまで出ると、警告する様子
モップを基板の上で振り続けると1.8V。この状態では警告せず。急激な電圧の変化を検知して警告するようだ
「備えあれば憂いなし」を証明した
静岡県沖地震
8月11日に静岡県を震度6弱の揺れが襲った先の地震。震源地も駿河湾ということで、東海地震か? と思われたが、気象庁の発表では無関係(プレート間の歪みが原因ではない)としている。原因はフィリピン海プレートで地下に潜り込んだプレートの破断(破壊)によるものという発表だ。
合わせて地震の規模が大きかったにもかかわらず被害が少なかったのは、日ごろから東海地震に対する備えがあったからと報道されている。家具の固定や非常用の持ち出し物資の準備といった実践的な防災意識も大切だが、地震そのものを知り科学的な知識を高めることも、防災意識の向上に役立つはず。だって、この記事読んだらより地震の秘めるパワーに怖くなったでしょ?
そんな科学的なアプローチから防災意識を高めるのが、今回紹介した「静電場センサ組立キット」だ。サンプル数が多いほど、精度や裏づけに有効になるので、家族や友達などにも紹介して、複数の観測拠点からデータを取ってみてはいかがだろうか?