日系奮闘 四川大地震
中国・四川大地震は、震源地に近い四川省成都市に進出している日系企業にも大きな影響を与えた。通信網が乱れ、安否や被害状況など情報収集に手間取る場面もあった。発生直後から営業を再開したイトーヨーカ堂と、生産効率よりも社員の安全を重視したトヨタ自動車の現地の状況を追った。 (四川省成都市で、池田実、写真も)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2008060302014644.html
「常識破り」
「常識破りには果実があった」と地震後の対応を振り返るのは、成都伊藤洋華堂の三枝富博総経理だ。
成都市内に三店舗を持つ。安全確認を終えた地震発生の五時間後、被災者に水や食料などライフラインを提供するのが役目と判断、地震発生翌日の五月十三日も営業することを決定した。
ただ中国人従業員は、家族から「帰ってこい」と言われたり、本部から「無理するな」と言われたり。怖くて動けなかった社員もおり、何人の社員が出勤してくるかわからない状態だった。
「会社側は社員のことを考えない」と非難する社員を説得する一方で、非常食や水など品薄が予測される物資は、店舗側からトラックを出し、取引先に取りに行った。万が一を考え、警備員も増員した。
手探りのなかのオープンは、市内では唯一、大手スーパーとして終日開店しただけに、約三万の成都市民が食品売り場で買い物をし、消費者から感謝の言葉も相次いだ。
五月末、十三、十四日の二日間出勤した社員二千五百人には、特別慰労金として五百元(七千五百円)を出した。平均月収の約半分弱の金額に「頑張れば認めてもらえる、社員のことも考えてくれたという思いが広がり、社内も固めることができた」と三枝総経理。
現在、被災地へ休日ボランティアに出る社員がいる一方、家族に帰郷を促され退職した社員数十人も出ているという。
社員の健康調査
成都に合弁の四川一汽トヨタの工場があるトヨタ自動車。地震発生以降中止していた操業は五月二十六日、昼夜の二直勤務体制を復活させた。当面は安全と従業員の健康を重視した体制で、「今は無理に生産効率を上げる段階ではない」(担当者)としている。
工場内では精密機械の精度に問題が出たほか、事務棟や一部工場の床などにヒビが生じた。しかし「何より優先したのは社員の人命と健康だった」という。全員の安全は確認できたが、震災直後には、銀行から現金を引き出せなくなる事態も発生したため、特別慰労金として全従業員千六百人に一人千元(約一万五千円)を配布した。
自宅が危険な状態となったり、余震を恐れて公園などでテント暮らしを続ける社員もまだ少なくない。このため社員の健康、心理状態を職場単位で聞き取り調査している。
四川の工場にとっては、初のライン停止。対応は中国側パートナーの意見を聞き、「トヨタより現地のやり方を優先した」という。